- 更新申請は基本的に許可が下りる
- 夫婦間の安定=日本への定着性がポイント
- 3年を取得するなら理由書を添付しよう
このページは、配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)の更新申請(延長申請)で提出する理由書について解説しています。原則、更新申請に理由書は不要ですが、3年の在留期間をもらいたいご夫婦はなるべく作成をおすすめします💁♀️
この記事の目次
配偶者ビザの更新申請に入る前に
理由書を作る前に、更新申請の基本的な考え方やルールをおさらいしておきましょう。
問題のない夫婦なら許可になる
理由書を作成する目的は「許可に近づけるため」ではありません。3年または5年の在留期間(期限)を取得するために作成するものです。
前回の配偶者ビザ申請時から、夫婦間に何の問題もなく、収入面も安定しているなら、まず許可は下ります。その次の段階である「一体何年有効*のビザが交付されるのか」が大きなテーマです。まずはこのことを意識してください。
*配偶者ビザには「6ヵ月,1年,3年,5年」の4種類の期間が存在します
更新申請は期限の3ヵ月前から
お手元の在留カードに印字されている期限日の3ヵ月前から更新申請が可能になります。それより早く入管局に赴いても、窓口で帰らされます😓
免許更新のような「お知らせハガキ」は届かないので、ご夫婦自らで配偶者ビザの期限を管理する必要があります。タイミングとしては、残り3ヵ月を切った頃から書類準備に取り掛かっても、申請には十分間に合います。
更新申請の理由書の書き方:見本
それでは、配偶者ビザ(更新申請)の理由書の書き方に入っていきます。見本の画像には、4つのパラグラフ(文章のブロック)を配置しています💁♀️
手書きで作成してもOKですし、文書作成ソフト(WordやGoogle Docsなど)を用いても構いません。署名だけは自筆が求められます。
タイトル・宛名・作成年月日など
配偶者ビザ(更新申請・延長申請)の理由書は、最初にこのような書式を各自作ってください。ご夫婦が愛知県内に居住していても、福岡県内に住んでいても、宛名は全国共通で法務大臣 殿にします。署名欄は、見本のように連名で記入しておいてください🙂
1.序章・プロローグ
更新申請(正式名称:在留期間更新許可申請)においては、下記の文章をコピペすればOKです。オレンジ色の部分はご夫婦に合わせて適宜修正してください。なお、文中に出てくる申請人は「外国人配偶者」を指します。
私は、申請人のJane Doeと申します。この度、日本人男性である田中 太郎(以下、「夫」と表記します)との婚姻の継続に伴い、出入国管理及び難民認定法第二十一条に基づく「日本人の配偶者等」在留期間更新許可を希望しております。以下、申請人として申請理由をご説明申し上げます。
配偶者ビザを更新・延長するのは外国人配偶者なので、文章の主語は原則外国人配偶者です。あなたの妻や夫の目線で記述してください。
日本人配偶者が代筆してもいいの?
外国人配偶者が自分の考えを日本語で上手く表現できない場合は、日本人配偶者(あなた)が話を聞き、代わりに書いてあげましょう。
配偶者(申請人)が日本語ペラペラならば任せてもOKです。そうでないケースでは、あなたが配偶者の意見を取り入れ、夫婦で相談しながら理由書を整えます。なお、配偶者ビザの更新・延長で提出する書類には日本語の記載が必須です。つまり、配偶者が外国語で理由書を作成しても、結局は日本語に翻訳することになります。
あなたが代筆した場合は、必ず記載内容を外国人配偶者(申請人)に読み聞かせ、理解してもらった上で署名を付してください。
2.前回申請時から現在に至るまで
- 外国人配偶者の普段の生活状況
- 夫婦間で発生した出来事やイベント
配偶者ビザの更新申請(期間延長)の理由書は、ザックリとした記述でOKです。認定申請や変更申請のように細かく記載する必要はありません。上記2つのポイントを順番に見ていきましょう💁♀️
(1)生活状況の記載項目
申請人の職業 | 記載内容 |
---|---|
専業主婦/主夫 | 日常の家事や買い物の傍ら、家で日々日本語の勉強に励んでいる, など |
パート | 週2日程度で出勤しており、職場の友人とも仲良くしている, など |
会社員 | 共働きなので家事は分担し、休日は趣味の食べ歩きに出かけている, など |
更新申請の理由書は3年・5年の在留期間を取得するために作成するので、日本への定着性をアピールするのが重要です。私(申請人)の生活が日本に根付きつつある様子を描写していくイメージです。
(2)出来事・イベントの記載項目
具体例 | 記載内容 |
---|---|
妊娠/出産 | 妊娠が判明した時期や出産後の両家親族の反応, など |
社会活動 | 日本に暮らす外国人向けに通訳ボランティアを始めた, など |
通学 | 今年から自治体主催の日本語教室に通い始めた, 運転免許を取得した, など |
前回の配偶者ビザ取得時から今までの間に起こった出来事を記述します。こちらも前項と同様、外国人配偶者(申請人)の「日本への定着性」がトピックです。妊娠・出産は夫婦関係の安定性、社会活動は日本国への貢献が評価されるので、3年の許可が下りやすくなります。該当する夫婦は積極的に記述してください🙂
私たち夫婦は、二人三脚で様々な出来事を乗り越え、お互いの信頼関係も以前と比べより強固なものとなっております。今後もお互いに協力し扶助し合いながら、いつまでも夫婦仲睦まじく日本で暮らしてゆく所存でございます。
パラグラフの終わりは、こんな感じの文章で締めておけば綺麗にまとまりますね。
3.生計面及び各種公的義務の履行
- 夫婦の仕事や世帯収入、預貯金額
- 年金や健康保険(税金)の納付状況
このブロックでは、上記の2点について主に記述していきます。夫婦関係の安定はもちろん、経済的安定性のアピールも3年・5年の配偶者ビザを取得するには必須です。嘘を書いてもバレるので、正確な情報を反映させましょう🙋♀️
(1)生計面の記載項目
項目 | 記載内容 |
---|---|
仕事について | 所属先会社名・勤務形態・転職したなら直近の勤務開始日, など |
収入について | 手元の給与明細から転記した月収額, 共働きなら世帯月収, など |
資産について | 夫婦の名義の口座残高・マイホームの有無, など |
特に決まった書き方はありません。「自分たち夫婦は正社員(契約/派遣社員)として会社から給与を得て、これだけの収入や預貯金がある、だから日本で暮らすにあたって何の問題もないですよ」という内容にもっていければOKです。扶養者(生計維持者)が会社役員・自営業の場合は、自身の役員報酬・所得額をそれぞれ記載してください。
(2)公的義務の履行について
なお、私たち夫婦は各種公的義務もすべて履行しており、前回申請時以降、犯罪を理由とする処分を受けたこともございません。
ご夫婦が年金や健康保険、住民税などの税金をきちんと支払っており、かつ警察のお世話になったことがなければ、上記の文面を挿入しておきましょう。ちなみに住民税などの滞納があると、3年の在留期間の取得は厳しくなります。滞納中の方は速やかに所定の手続きを行ってください🙆♀️
4.終章・エピローグ
- 個人的に入管局へ伝えておきたいこと
- 前回の配偶者ビザ申請に対する補足説明
「夜中に夫婦喧嘩をしたせいで、一度自宅に警察を呼ばれたが、お互いに反省し今は仲良く過ごしている」など、何かリカバリーすべき事柄があれば記載します。そのほか、前回提出した申請書類に誤りや相違点があった場合は、訂正の補足を挿入します。
私たち夫婦は、結婚してから現在に至るまで、双方の理解や絆を日々深め合っており、大変充実した生活を過ごしております。これからもお互いに手を取り合い、円満な家庭を築いてゆきたいと願っております。
特に書くことがないご夫婦は、上記のような文章を記述しておけばOKです。
以上の事情をご理解いただき、私の在留期間更新許可申請に格別のご配慮を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
最後に下記の文面をコピペすれば、更新申請(延長申請)の理由書は完成です。終了の印として、冒頭に掲載した見本画像を参考に、右下の余白部分に以上と記載してください。また、理由書が2枚以上になった場合は、ページ番号を付しておきましょう。
理由書に「3年の許可をください」という文言を明記しても効果はありません。
よくある質問:配偶者ビザの更新・延長
更新申請(延長申請)の理由書を作成する際に、想定される質問を紹介します。
審査中に期限が過ぎたらどうなる?
今持っている配偶者ビザの期限ギリギリに申請しても、オーバーステイになることはありません。申請後、最長で2ヵ月間の猶予が与えられます。
外国人配偶者が合法的に滞在している限り、2ヵ月の猶予期間は無条件で交付されます。また、配偶者ビザの更新の審査期間は長くても1ヵ月程度なので、仮に在留期限日の当日に入管局へ申請しても間に合います。そのため、理由書に早期交付のお願い文や、申請が遅れた旨の謝罪文は書かなくてOKです🙆♀️
参考法令入管法20条6項,21条4項
更新の理由書は1枚でもいい?
夫婦間にトラブルがなく、かつ転職等もない場合、理由書は1枚書けば十分です。もちろん2枚以上の分量になっても構いません。
この記事で説明した書き方を採用すれば、おそらく1枚に収まるはずです。ただし、後述する「別居期間があるケース」や「再婚後に申請するケース」では、書くことが増えます。該当するご夫婦は相応の枚数を準備する必要があります。
別居期間がある場合の書き方は?
配偶者ビザを所持しながら別居すると更新申請で不利になります。入管局から指摘される前に手を打っておくのがベターです。
厳密には、同居の有無は「配偶者ビザの該当性を判断する一要素」と解釈すべき*ですが、ひとまず別居状態は審査でマイナスになると考えてください。別居に至った合理的な理由や時期、現在同居中なら別居を解消した時期についても記述しましょう。
別居の原因 | 記載内容 |
---|---|
親族の看病のため帰国 | 親族の病状の程度・母国に看病できる人がいない理由, など |
単身赴任 | 配偶者を帯同しなかった理由, など |
激務のため別宅に宿泊 | その期間はどれくらい仕事が忙しかったのか, など |
そもそも、配偶者ビザは「夫婦が共同生活を営むため」に交付されるものです。それゆえ「別居している共同生活を営む意思がない配偶者ビザに該当しない」というロジックで入管側は判断しようとします。それを避けるために、合理的な理由(別居したかったわけではない旨)を記載しなければなりません。
常識の範囲内での一時帰国や帰省に関しては全く問題ありません。
*京都地裁平成27年11月6日判決
再婚した場合の書き方は?
このパターンは、これまで紹介した申請と次元が異なります。難易度が上がるので必ず理由書を作成しましょう。
再婚後の申請も更新申請に分類されます。ただし、配偶者が変わっている以上、実質的な変更申請に相当します。そのため、理由書も変更申請と同等のものを用意する必要があるので、該当するご夫婦は以下の記事を参照してください。なお、このケースで3年の配偶者ビザが付与されることは滅多にありません。
配偶者ビザの理由書(結婚に至った経緯)の書き方を図解すでに3年の在留期間を持っていても1年に下げられる、また最悪の場合は不許可になることを覚悟しておいてください。
3年の配偶者ビザを取得するコツ
- 共同生活を営んでいる(原則同居している)
- 納税などの義務を果たしている
- 交通違反を含む処分歴がない
- 安定した世帯収入が見込める
これらの条件を満たせば、そのうち3年の在留期間は交付されます。ただし、自分たちで「問題ないです😉」と主張しても説得力に欠けるので、それに見合った証拠が必要です。この証明資料のことを、配偶者ビザの申請では“疎明資料”と呼んだりします。
入管局のサイトや入管窓口で「疎明できるもの」という言葉が出たら、自分以外の「第三者がそれを認めた書類」を意味すると考えてください。
正確には、証明は「確信に値するもの」、疎明は「一応確かだと判断できるもの」といった違いがあります(出典有斐閣法律用語辞典)。しかし、自分で(ご夫婦で)申請書類を作る場合、この違いを突き詰めてもあまり意味がないので、とりあえずは同じ意味だという理解でOKです。
必要書類(疎明資料)の例
書類の名称 | 何がアピールできるか | 主な対象者 |
---|---|---|
在職証明書 | 自身の勤務先・勤続年数・役職など | 会社員 |
法人の登記事項証明書 | 社歴・事業内容・資本金額など | 会社役員 |
給与明細書のコピー | 直近の収入状況など | 更新申請の直前に転職した人 |
残高証明書 | 本人名義で保有している現預金など | 預貯金のある夫婦 |
不動産の登記事項証明書 | 土地や建物の保有資産 | 持ち家に暮らす夫婦 |
母子健康手帳のコピー | 妻が確かに妊娠中であること | 出産を控えた夫婦 |
更新申請の必要書類(疎明資料)としてよく挙げられるのは上記の書類です。なお、基本的な提出書類は入管庁のWebサイトで公開されているので、そちらを参照してください。この記事で掲載しているのは、入管側が公表していないものです。
夫婦仲の良さや安定性を理由書に書くことも大切ですが、それを裏付ける書類の添付も同じくらい重要ですね🙋♀️
3年の在留期間が出るタイミング
初回の更新申請で3年のビザが交付されることもあります。一般的には2回目、3回目の申請で取得できるご夫婦が多いです。
何回更新申請をしても1年が続く場合は、何か原因があります。たいていのご夫婦は行政書士や弁護士さんに依頼しなくても、自力で3年の在留期間は取得できますが、どうやっても結果が伴わないときは、ご依頼を検討いただければ幸いです🤗
最後に宣伝しますが、行政書士や弁護士さんに依頼したほうが早く3年の配偶者ビザを取得できる、とだけ付け加えておきます。
配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)の更新申請・延長について解説しました。将来、永住権の申請などで参考にする機会もあると思うので、作った書類は写真データなどで保管しておくことを推奨します💁♀️