- 外国人の名字変更は通称名登録
- 日本人の名字変更は氏の変更届
- 複合姓は家庭裁判所の許可が必要
このページでは、国際結婚に伴う配偶者の氏名変更について解説しています。
この記事の目次
国際結婚は夫婦別姓が基本
日本人同士の婚姻と異なり、外国人と結婚した場合は、婚姻届を提出してもお互いの名前は変わりません。同姓にするなら別の届け出が必要になります。
同じ姓を名乗ることは、夫婦が同じ戸籍に入ることを意味します(引っ越すようなイメージです)。しかし、外国人に戸籍は作成されないため、日本人配偶者の戸籍に入りようがありません。以上の理由から、国際結婚の場合は夫婦別姓が原則になっています。
ちなみに、婚姻後の戸籍謄本には、外国人配偶者の情報が反映されます。
ただし、これはあくまでも日本人配偶者(あなた)の戸籍に紐づいているだけなので、外国人配偶者単独の戸籍が作成されたわけではありません。将来的に配偶者が日本国籍を取得した(帰化した)時点で、新しく戸籍が編製されます。勘違いされる方が多いので、念のため説明しておきました💁♀️
外国人配偶者が名字を変える手続き
続き柄 | 変更前 | 変更後 |
---|---|---|
日本人夫 | 田中 太郎 | 田中 太郎 |
外国人妻 | ドゥ ジェーン | 田中 ジェーン |
外国人が日本人の姓を名乗る場合は、通称名の届け出が必要になります。なお、通称名は一度登録されると、変更は原則認められません*。
*根拠平成25年11月15日総行外第18号「通称の記載・変更における留意事項通知」
通称名とは?
通称名とは、日常生活で使用している(これから使用する)、本名以外の氏名を指します。住民票に通称名が記載されるため、役所が公認しているニックネームといえます。「通名」と略して呼称される場合もありますね。
通称名は運転免許証のほか、マイナンバーカードや健康保険証にも記載されます。ただし、在留カードには記載されません。
通称記載申出書を提出しよう
通称名の登録は最寄りの市役所や区役所で手続きできます。窓口に備え付けてある「通称記載申出書」に必要事項を記載し、本人確認資料や婚姻が分かる資料(パスポート,戸籍謄本,在留カードなど)を持参して届け出を行います。もちろん、日本人配偶者が同伴されても構いません。
申出書の書き方は上記画像を参考にしていただいて差し支えありませんが、管轄の役所によって様式は少し異なります。
以上の届け出が完了すれば、各種契約などに通名を用いることができるようになります。
なお、役所のWebサイト等では、通称名登録に必要な資料として「その通称を実際に使用している証拠」を示すよう案内している場合があります(社員証や公的機関の領収書など)。しかし、国際結婚に伴う登録の場合、これらの資料は原則不要です🙆♀️
新婚のご夫婦はこれから名字を登録し、その名前で生活していくので、そういった証拠はそもそも提出できないですね。
参考住基法施行令第30条の16,総務省自治行政局「住基台帳事務の取扱い(H24.10.29)」
通称名に使用できる文字
外国人が日本国内で用いる名前なので、当然ながら通称には漢字やカタカナ、ひらがなといった日本文字のみ使用できます*。中国漢字(簡体字,繁体字)やアルファベットは登録できません。日本人の命名と同じと考えてください。
*根拠平成24年4月4日総行住第37号「住民基本台帳事務に関する質疑応答」
メリットとデメリット
結論から言うと、通称名を作ることにメリットもデメリットもありません。当事者である夫婦の気持ちを基準にして考えてください。夫婦別姓に違和感があるならば作る、そうでないなら別姓のまま、といった決め方でOKです。
現在は外国人が本名のままでも不自由なく生活できるよう、各種制度が整備されています。
入管法や住基法の改正に伴い、2012年からは外国人にも住民票が作成され、また公的身分証明として在留カードが交付されることになりました。これによって利便性はある程度向上したので、本名のままでも不便を感じることは少なくなっています。
届出時の注意点
通称名制度は住民登録に結び付いているため、日本国内に住所がないと手続きはできません。
かんたんに言うと、届け出る時点で、日本人配偶者と外国人配偶者が同じ世帯に入っていることが推奨されます。つまり、相手が現在海外に居住しているご夫婦*は、配偶者ビザを取得し来日してから届け出ることになります。
*在留資格認定証明書交付申請を選択しているご夫婦が主に該当します。
婚姻届の提出とまとめて通称名を登録することも可能ですが、管轄窓口が変わる場合もあります。
市役所や区役所によっては、婚姻届を取り扱う「戸籍課」と、住民票関連の手続きを担う「住民課」で窓口が分かれているところもあります。そのため、夕方頃に婚姻届を持参した場合、開庁時間の都合上、1日で終わらない可能性があります。
住民登録地と本籍地が異なる場合は、2つの役所を巡るケースも考えられます。事前に確認を取った上でスケジュールを組んでください。
本名を変更するケース
通称名を使用するほか、外国人配偶者の本名自体を変更する方法もあります。「DOE JANE」さんが「TANAKA JANE」さんに改名するようなイメージですね。名字の変更が認められると、相手側のパスポートにも日本人配偶者の名字が反映されます。
この場合、日本の役所に氏名を変更できる権限はありません。「母国の役所」や「日本にある母国の大使館・領事館」で手続きを行います。
また国際結婚された夫婦の中には、改姓後に通称名を登録し、生活している方も多く見受けられます。
配偶者ビザ取得後の改姓は要注意
配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)が交付されたあとに本名を変えた場合は、旧名のままになっている在留カードの記載事項を変更しなければなりません。改姓後14日以内の届け出が義務付けられているので、忘れないようにしてください。届け出先は最寄りの入管局や出張所です💁♀️
届け出を放置すると、配偶者ビザの更新や、永住権の申請で不利になる場合があります。なお、通称名の登録時は届け出不要です。通称は在留カードに記載されません。
日本人配偶者が名字を変える手続き
外国人配偶者の氏名をジョン・レノンさんと仮定します。レノンが姓で、ジョンが名前ですね。日本人配偶者は山田春子さんをモデルにします。
変更の内容 | 変更後の氏名 | 家庭裁判所の許可 |
---|---|---|
姓のみを変更 | レノン 春子 | 原則不要 |
姓を複合させる | レノン山田 春子or山田レノン 春子 | 必要 |
姓と名を変更 | レノン 山田春子 | 必要 |
真ん中の複合姓(ダブルネーム)を選択する場合、名字の順番は自由です。また一番下との違いは、名字と名前の区切りです。最後の例は名字と名前を変えているので、下の名前が「山田春子」になります。少し珍しい方法ですね💁♀️
本名そのものが変わる
外国人の通名と異なり、日本人配偶者が名字を変える場合は、本名そのものが変わります。状況に応じて使い分けるというより、運転免許証からポイントカードに至るまで、すべての名前が統一されるイメージです。
そのため、お子様が生まれた場合は、変更後のあなたの姓と同じ名字で役所に登録されます。この点も踏まえて名字の変更を検討してください。
アルファベットは使えない
氏名変更は戸籍謄本に反映されるため、原則はカタカナを用いて表記されます(戸籍に外国の文字は登録できません)。配偶者が韓国・中国籍などで漢字の名字がある場合は、日本文字として扱われている漢字に限り、名字に使用できます。
ただし、漢字の名字に変更する際は、婚姻届の氏名欄も漢字表記で揃える必要があります。
外国人との婚姻による氏の変更届の書き方
項目 | 記入上の注意点 |
---|---|
本籍 | 婚姻前の戸籍(親の戸籍)ではなく、婚姻後の自分の戸籍を記入 |
婚姻年月日 | 海外で先に結婚した場合は、海外側の婚姻成立日を記入 |
日本人配偶者が外国人の姓を名乗る場合は、氏の変更届と呼ばれる書類を市役所や区役所へ提出します(戸籍法107条2項)。なお、記入例のように名字のみを変更する場合、家庭裁判所の許可は不要ですが、婚姻してから6ヵ月以内*の届け出に限られます。半年を経過すると、家庭裁判所での手続きが必要になるので注意してください。
*海外先行で婚姻した場合は、海外側の婚姻日から6ヵ月以内
家庭裁判所の許可が不要の場合は、婚姻届と同時に「氏の変更届」を提出できます。変更届は役所の窓口に備え付けてあります。
ミドルネームを登録するケース
ノエル・トーマス・ギャラガーさんと山田春子さんが国際結婚したケースを想定します。この場合、姓の「ギャラガー」にミドルネームの「トーマス」を加えるかたちになり、変更後の名前は「ギャラガートーマス 春子」さんとなります。ミドルネームを加える場合であっても、家庭裁判所の許可は原則不要です。
ミドルネームから始めるパターンもあります。どちらが良いという話ではないですが、ラストネームから始める方が多い印象を受けます。
結局のところ、ミドルネームを日本人の姓に含められるかどうかは、配偶者の国籍に左右されます。名字の一部として扱われていたら、日本人配偶者の名字にも使用でき、反対に名前(ファーストネーム)の一部とみなされれば、名字には使えないと判断されるのが通例です。ミドルネームの意味・つけ方は親によって異なることもあります。
婚姻後の名字にミドルネームを追加する際は、提出予定先の役所へ事前確認をおすすめします。婚姻届の書き方が変わる場合もあり、また役所によってはパスポート等の原本提示が必要になります。
複合姓(ダブルネーム)の取り扱い
自分の姓と外国人配偶者の姓が両方含まれている名字を「複合姓」といい、俗にダブルネームといわれています。複合姓の登録にあたっては、事前に家庭裁判所の許可が必要とされているため、婚姻届の提出と同時に手続きはできません。
冒頭で説明した、これら3つの類型を指します。お互いの名字が含まれる場合は家庭裁判所への申し立て、という認識で構いません。
婚姻届の提出家庭裁判所での手続き再度役所へ訪問,といった流れになります。
名字の順番について
外国人配偶者の姓を先頭にするか、自分の姓を先頭にするかは、ご夫婦が協議して選択します。日本に暮らし続けるのであれば、日本姓を最初にしたほうが都合がいいと考える方もいます。逆の順番に再変更するのは極めて難しいとされているので、後悔のないようにしたいですね💁♀️
日本語表記 | アルファベット表記 |
---|---|
山田レノン 春子 | Haruko YamadaLennon |
レノン山田 春子 | Haruko LennonYamada |
英語で表記した際の印象も微妙に変わります。海外移住の予定があるご夫婦は、現地の人からの見られ方など、海外での使用も考慮した上で検討するのがベターです。
必ず認められるわけではない
複合姓の使用を認めるかどうかは、裁判所側が判断するので、却下される場合があります。また具体例の最後に挙げている、旧姓を名前の中に組み込む方法(山田春子を下の名前にするパターン)は、あっさり却下となった方も実際にいらっしゃいます。ダメだった場合は、相手の姓のみを名乗るよう検討することになります。
参考 戸籍上の氏名などに関する審判裁判所氏名変更は戸籍に反映される
名字の変更手続きが完了すると、戸籍謄本(戸籍証明書)に氏の変更が追加され、氏名欄も新しい名前に更新されます。
日本の配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)の申請中に、名字の変更手続きを行うことは極力避けてください。審査に必要な書類の再提出を求められる可能性があるほか、入管側の審査がストップする原因になります。ビザ申請を行う際は、氏名変更が終わってから準備しましょう。
離婚すると名字はどうなる?
夫婦別姓を選択したご夫婦は、当然離婚後も名字は変動しません。一方で、外国姓に変更した元日本人配偶者は、所定の手続きを踏めば、婚姻前の名字に戻すことができます。自動的には変わらない点に注意が必要ですね。
名字変更時の届出内容 | 家庭裁判所の許可 |
---|---|
複合姓を選択せず、婚姻後6ヵ月以内に届け出た | 離婚後3ヵ月以内なら不要 |
複合姓を選択せず、婚姻後6ヵ月以降に届け出た | 必要 |
複合姓を選択した | 必要 |
婚姻届と一緒に「氏の変更届」を提出した場合など、変更時に裁判所を経由しなかった方は、離婚後3ヵ月以内であれば、役所への届け出だけでスムーズに旧姓へ戻せます(戸籍法107条3項)。そのほかのケース、つまり「家庭裁判所の許可を得てから外国姓を登録した方」は、離婚して旧姓に戻す際も同様に裁判所の許可が必要になります。
国際結婚における名字の変更手続きについて解説しました。繰り返しますが、同姓にするか別姓のままかは夫婦の自由で、別姓だからといって配偶者ビザの申請で不利になることもありません。通名登録も氏変更も、原則変更できない点は共通するので、お相手のご意向も尊重した上で判断いただければ幸いです💁♀️