- 過剰な愛情表現には注意を払おう
- ブローカーが介入している事例もある
- 相手の個人情報や送付資料に注視しよう
このページでは、配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)の申請前に知っておきたい、国際ロマンス詐欺の手口や対策をテーマに解説しています。
この記事の目次
国際ロマンス詐欺の概要
恋愛感情を抱かせた上で、相手に送金を要求する類の詐欺を、俗にロマンス詐欺といいます。近年は暗号資産(仮想通貨)を用いる事例も増えています。
FacebookなどのSNSサイトやアプリがきっかけになる場合が多く、まれに観光地などでの出会い(ナンパ)から詐欺に発展するケースもあります。性別に関係なく被害が多発しており、当事務所でも、ヒアリングの最中に「あの…😥」と詐欺の可能性をご案内する日が定期的にやってきます。
また海外送金だけでなく、日本で働くために配偶者ビザを取得するケース(偽装結婚)も、広い意味でのロマンス詐欺と表現される場合があります。
偽装結婚には大きく分けて2つあり、日本人配偶者側も承知の上で加担するケースと、騙されたまま偽装婚に関与させられている(片方は真実の結婚と思い込んでいる)ケースに大別できます。次の章からは、送金目的の詐欺と、配偶者ビザ目的の詐欺を詳しく掘り下げていきます。
送金を目的とした詐欺の手口
- とにかく愛情表現が積極的
- 相手から自分の個人情報を送ってくる
- 会いたいけど会えない状況を作る
もちろん、上記に該当したからといって騙されているとは限りません。ただ過去の経験上、これらの傾向が目立っています。順番に見ていきましょう💁♀️
過剰な愛情表現を用いる
ロマンス詐欺の場合は、愛情の表現が極端に過剰です。ほぼ毎日、あなたに好意があることをアピールしてきます。
外国籍の方は積極的にアプローチをするものだと考えていても、異常さを感じたら一旦立ち止まってください。まずターゲットに惚れてもらわないと話にならないので、相手は最短距離で好意を示してきます。私たちもこれまで1,000組以上のビザを申請してきましたが、毎日愛の言葉を交わす方は少数派です。意外と普通だったりします。
最初のあいさつから送金依頼までのやり取りには一定のマニュアル(トークスクリプト)があるとされています。
相手から個人情報を開示する
向こうから先に自分のIDカードや職場などの画像を提示します。当然、これらの画像は偽造されたもの、もしくはどこかから盗んだものです。
あとあと疑われないように、また早く信用を得るため、やり取りの序盤に送られてきます。IDなどの身分証は画像編集ソフトで偽造済、職場等の写真は他人のSNSアカウントから抜き取って色んなシチュエーションを用意しているケースが多い印象を受けます。
会いたくても会えない状況を作る
パスポートをこれから作成する、銀行口座に貯金がない、航空券代を援助してほしいなどと理由をつけて、送金するように誘導します。
2人の関係を前進させるためにお金が必要、というロジックで送金をお願いしてきます。要求してくる金額は数十万円程度(日本円換算)が平均で、それっぽい見積書などの画像を一緒に送ってくるパターンもあります。また、送金依頼のタイミングで、第三者が登場*するのも典型的な事例です。
*銀行口座を持っていないので、母親の口座に送金してほしい,など
航空券を見せてくる事例
結婚前に一度日本を訪れたい、もしくはあなたが観光を兼ねて日本へ招待するという話になった際、相手が航空券の画像を見せてくることもあります。来日する意思をターゲットに伝え、そこから諸々の手続き費用と称して送金を依頼するパターンですね。
モザイク処理をかけていますが、この画像は実際に詐欺グループと思われる外国人が使い回している航空券の画像です。
便名欄のAF3375はキエフ発パリ着のエールフランス航空を意味するため、この時点でANA(全日本空輸)の便ではないと推定できます。ちなみに、これは東京から大阪までのチケットとして相手が提示したものです。記載内容を見れば矛盾に気付けるので、届いた資料画像にはきちんと目を通しましょう。
配偶者ビザを目的とした詐欺の手口
- 組織的な犯行かそれ以外かに分かれる
- 相手からの話題がビザ関連ばかり
このケースは実際に相手と対面する機会もあり、また当事者である日本人配偶者が外国人を信用しているため、発覚してからご相談をお受けすることが多いです。
分業制を敷いているパターンが代表的
本人とは別に、Eメール等で連絡を取る係、対面時に通訳やガイドを担う係などと分かれているパターンが多いとされています。
いわゆるブローカーが介在する事例です。外国人が高額な手数料を支払い、ブローカー側の主導で2人の交流を深めていきます。SNSや出会い系サイトで知り合い、しばらく連絡を交わしたあとに相手の母国へ渡航し対面するのが一般的な流れです。
やり取りは日本語だったのに、渡航して実際に会った時、相手が日本語をほとんど話せない、もしくは文面と口調が異なる点も特徴として挙げられます。
なお、滞在中は「職場の同僚」や「学生時代の友人」という設定のガイド役や通訳担当が最初から最後まで同行することも多く、宿泊先ホテルの部屋まで入ってきたという方も中にはいらっしゃいました。1回目か2回目の渡航時に、日本人が戸籍謄本や独身証明を持参し、現地で結婚手続きを行う事例が多い印象です。
ブローカーを通さないケース
相手が日本で生活したいと考えている最中に、偶然日本人とマッチングしたケースが該当します。個人的に騙そうとしてくるので、判断は非常に難しいです。配偶者ビザが欲しいがために、知り合った当初から恋愛感情や結婚をほのめかしてきます。
ビザに関する話題ばかり振ってくる
夫婦としてのゴールをビザ取得に設定している点が、この手口の特徴といえます。夫婦の展望や来日後の計画には興味を示しません。
騙す側の外国人は配偶者ビザの取得しか頭にないので、同居する上での決め事などを自分から話すことはまれです。仮に話し合ったとしても、浅い範囲にとどまり、真剣さを感じることは少ないと考えられます。一方、配偶者ビザの申請に関しては積極的に発言し、書類は本当にこれで大丈夫かなど、過剰気味に心配する傾向があります。
そもそもなぜ偽装結婚をするの?
- 結婚するだけでビザを取得できる
- 就労活動に一切の制限がない
就労ビザと違い、配偶者ビザには学歴等の要件がなく、日本人と結婚したという事実があれば誰でも申請できます。また就労制限もなく、日本人と同様にすべての職種に就けることから、出稼ぎ感覚で来日したい外国人からは非常に人気があります。
ビザを取得したあとはどうなるの?
配偶者ビザを取得した、つまり合法的に日本への入国が可能になった時点で音信不通になった、というご相談は実際に受けたことがあります。他の事務所さんが受任していたため詳細は不明ですが、おそらく相談の時点で既に入国していたものと思われます。
形式上は夫婦として同居しているが、実は本命の彼氏彼女と暮らすために来日していた、同居開始直後に突然蒸発した、という話もちらほら耳にします。
詐欺を未然に防ぐ方法と対策
この記事を見て「もしかして自分も詐欺に遭っている?😰」と不安になった方は、以下の方法を試してみるよう推奨します。
相手の情報を検索にかける
本名やメールアドレス、電話番号、アプリのIDなどで検索すれば、まれに詐欺被害者のデータベースにヒットすることがあります。
ちなみに、ABCという単語を検索したい場合は、“ABC”とダブルクォーテーションマーク(“”)を付して検索すれば、その単語を含んだページのみ検索結果に表示されます。国際電話番号もアドレスも簡単に偽装できるので、とりあえず検索してみてください。
メッセージの内容もヒントになり得る
序盤のやり取りは、マニュアルをそのままコピーして送っていることもあるので、文章の一部を抜き出して検索するのも有効な方法です。
画像検索もおすすめ
顔写真のほか、職場や友人との撮影写真と称して送られてきた画像も、念のため検索しておきます。他人のSNSアカウントが出てくる場合があります。
別人のFacebook,VK*のアカウントがヒットすれば、詐欺グループが勝手に写真を拝借している可能性は高いといえます。なお、向こうも対策として画像を反転させたり、角度を変えたりしているケースがあるので、必ず判別できるわけではありません。
*ロシアを中心に利用されているSNS
職業を詳しく聞いてみる
相手が会社員ならその業務内容やこれまでの勤務地を、学生なら専攻科目、授業風景や通学時間などを突っ込んで質問してみてください。
嘘であれば話題をそらすか、返答に時間がかかります。人は嘘を長期間記憶するのが苦手なので、メモ帳などに相手の発言をまとめておけば、あとで矛盾に気付けるかもしれません。ただし、仮に本当だった場合は失礼な印象を与えかねないので、タイミングには注意が必要ですね。
届いた資料をよく見る
詐欺に使われたとされる偽造搭乗券の画像です(一部加工済)。印字部分を翻訳してみたり、拡大して光の反射加減をチェックしましょう。
相手を信用しきれない場合は、送られてきた資料のすべて(文字のフォントなど)に目を通してください。偽造かを見分けるのに有効な手段は「角度を変えてもう1回送り直してもらうこと」です。向こうが実物を用意していれば効果はありませんが、画像データに細工していると撮影角度を変えられないため、拒否してきます。
ID番号(国民登録番号など)の部分をさりげなく手で隠している場合も多いです。この画像も詐欺で使い回されている画像のひとつです。
日本以外で暮らすことを提案する
配偶者ビザ目的の詐欺において有効です。向こうは日本で働くことが目的なので、自分の母国や第三国での生活を必ず拒絶します。嫌がる理由を聞いてみて、論理的におかしい点や一貫性のなさ、矛盾点があれば注意したほうがいいかもしれません。
よく取り上げられる、米国軍人や軍医を騙った類型以外にも、色んな種類の詐欺があります。国際恋愛といっても、つまるところは人間同士の付き合いなので、お金や配偶者ビザばかりが話題になる場合は警戒すべきといえますね💁♀️