- 退職しなければ就労ビザのままでもOK
- 配偶者の在留状況や職歴を再確認しよう
- 法律違反がある場合は反省文等を添付する
このページでは、就労ビザから配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)へ切り替える際に知っておきたい点をテーマに解説しています。
この記事の目次
この記事の対象になる方

在留カードの在留資格欄に、職種が印字されている外国人と結婚した日本人が対象です。
具体的には「技術・人文知識・国際業務」や「企業内転勤」などの記載があるケースを想定しています。日本側と海外側の結婚が成立したあとは、在留資格変更許可申請と呼ばれる手続きを経て、配偶者ビザを取得する流れになります(入管法20条)。
技能実習ビザで来日している外国人(研修生)に関しては、雇用契約等の兼ね合いから、変更申請は行わず、帰国後の認定申請を検討するのが原則です。

ちなみに「就労ビザ」という名前のビザは存在しません。色んな職種のビザを総称して、便宜的に「就労ビザ」と呼称されています。
申請時の必要書類については、法務省Webサイトから最新情報が確認できます。なお、当サイトにも必要書類を個別に解説した記事があるので、よければ一度目を通してみてください💁♀️
配偶者ビザへ切り替えるメリット
一般的には、変更申請をしたほうがメリットは多いとされています。簡単にいうと、ビザ(在留資格)が身分に紐づくか、仕事に紐づくかの違いですね。
多様なライフスタイルを選択できる

退職や転職が完全に自由になります。お洒落なカフェを始めたり、農業に従事したり、なんでもありな状態になります。
配偶者ビザが許可されると、以降の仕事は何をしても構いません。育児や家事に専念するためスパッと辞めてもOKですし、週3日程度のパートに応募してもOK、アイディアがあれば起業して社長になってもOKです。もちろん、今の職場で働き続けることも可能です。仕事の有無に左右されなくなる点は大きなメリットといえますね。
永住ビザや帰化申請の条件が緩和される

将来、永住権や日本国籍を取得する際に条件が緩和されます。具体的には、申請できるまでの期間が通常よりも短くなります。
就労ビザのまま永住権(永住ビザ)を申請する際は、原則10年間の日本居住歴が求められます。一方で、配偶者ビザから永住ビザへ移行する場合は、原則3年*が経過した時点で申請できます。厳密には細かい要件もありますが、とりあえずは楽に永住権等が取得できるという認識でOKです。
*参考永住許可に関するガイドライン(法務省公表)
配偶者ビザへ切り替えるデメリット
主に2つの欠点があります。メリットの逆がそのままデメリットになりますね。
離婚後の手続きが厄介

離婚すると配偶者ビザでは生活できなくなるので、ほかのビザ(在留資格)へ新たに切り替える手続きが必要になります。
既に永住ビザを取得していれば問題になりませんが、その前に離婚した場合は何らかのビザへ変更しなければなりません。元配偶者が離婚後も日本に暮らすのであれば、就労ビザに戻るか、離婚定住者ビザを検討するのが一般的です。ただし、切り替えが必ず認められるとは限らないので、外国人にとって離婚は相応のリスクになります。

勤続年数によっては永住ビザが遠のく

数年後に永住ビザの要件を満たすタイミングで配偶者ビザへ変更すると、在留期間の都合上、かえって取得時期が延びてしまう可能性があります。
永住ビザは「3年」以上の在留期間を持っていないと申請できません。ほとんどのご夫婦は、初回の配偶者ビザ申請で1年を付与されるため、何度かの更新申請(延長)を経て、3年に上がるまで待つことになります。その間に、本来の申請時期を過ぎてしまい、結果的に就労ビザから切り替えたほうが早かった、という事例がまれに発生します。
大きなデメリットにはならない
仮に、上記のケースで先に配偶者ビザへ変更しても、申請自体は遅かれ早かれできるようになるので、そこまで心配する必要はありません。以上を踏まえて、お相手が現在の仕事を退職せずに続ける場合は、無理に配偶者ビザへ変更しなくてもよい(義務ではない)ことを知っておいてください。ご夫婦が自由に選択できます。

これまでの在留状況をおさらいしよう
配偶者ビザの変更許可をもらうには、入管側へ配偶者の在留歴や生活状況をまるっと伝えなければなりません。少しでもルールを破っていると審査に響きますし、当の本人も気付いていないケースがあるので、この機会に夫婦で確認しておきましょう。
転職歴と業務内容をチェック

配偶者の転職歴や当時の業務内容を確認してください。仕事の中身に一貫性があればOKです。職種が大きく変わっていれば要注意です。
来日してからずっとWeb系のエンジニアを続けている、通訳担当として在籍しているなど、職種に変化がなければ問題はないと考えられます。就労ビザは就ける仕事の範囲がそれぞれ固定されており、一般的なオフィスワーカーであれば「技術・人文知識・国際業務」ビザ、外国料理のコックなら「技能」ビザが該当します。
職務に応じたビザを保有していたか
職種自体に変更があった外国人は、そのタイミングで適切にビザを変更していたかが重要になります。もし、前のビザのまま異なる内容の仕事を続けていた場合は、法律違反(資格外活動)の状態にあった可能性があります。
本来定められているビザの範囲を超えた活動を意味し、違反者には罰則も設けられています(入管法70条,73条)。
違反の程度にもよりますが、資格外活動が判明すると変更申請は大変不利になるため、後述する反省文等の添付でリカバリーを図ることになります。なお、最新の在留資格一覧表は出入国在留管理庁のWebサイトから閲覧できます。
支社間や店舗間の異動はOK

担当業務は同じで、単に就業場所が変わっただけであれば、特段不都合はありません。スムーズに配偶者ビザへ移行できると考えられます。
就労ビザでの雇用形態をチェック
お相手が正社員以外の場合は注意してください。契約社員であれば検討の余地ありですが、アルバイトやパートとして在籍している場合は原則NGです。現在持っている就労ビザの要件をそもそも満たしていない可能性が非常に高いので、まずは今の業務が合法的な範囲に収まっているかの確認が必要です。
就労系のビザは正社員での雇用が原則求められるので、実務上、アルバイト契約ではビザの該当性を失ってしまいます。
いつまでに変更申請すればいい?
明確なルールはありません。ご夫婦の好きなタイミングで申請が可能です。ただし、外国人配偶者が既に退職している場合は、退職した日から「3ヵ月以内」に配偶者ビザへ切り替える必要があります。無職のまま3ヵ月を過ぎると、就労ビザが取り消される可能性も出てくるため*、仕事を辞める予定の方も速やかに申請書類を作成しましょう。
*就業できない正当な理由がある場合を除きます(入管法22条の4)

退職してから大幅に時間が経っている、また過去に資格外活動違反があったケースでは、反省文や嘆願書などの書面添付が推奨されます。
当然ながら、ルール違反があると在留状況不良と判断され、配偶者ビザへの変更は難しくなります。反省文等を作成したからといって許可になるとは限りませんが、時系列を追って正直に事実経過や顛末を伝え、かつ早めに申請することが望ましいとされます。
就労ビザから配偶者ビザへの変更申請について解説しました。申請上の扶養者(生計維持者)は夫婦のどちらでも構わないので、よく話し合った上で変更するか否かを判断いただければ幸いです💁♀️