- 日本で先に婚姻する方法を解説
- 必要書類を見本画像付きで紹介
- 日本人側の宗教・改宗に注意が必要
日本人とモロッコ人の国際結婚を行政書士が解説します。婚姻手続きと配偶者ビザの申請を一緒に済ませたい方向けに、手続きの流れや必要書類を順番に紹介していきます。
日本人女性とモロッコ人男性の婚姻を想定しています💁♀️
この記事の目次
モロッコと日本のどちらで結婚すべき?

国際結婚はどちらの国から始めても構いません。最終的に両方の国で結婚が成立すればOKです。
モロッコ人との結婚には2つの方法・ルートがあります。モロッコ側で先に婚姻登録を済ませる方法と、日本で先に婚姻届を提出する方法です。まずはこれらの違いやメリット・デメリットをかんたんに説明します🙆♀️
- 結婚後はモロッコに移住する
- 中長期間渡航できる時間の余裕がある
モロッコで先に結婚する場合は、日本人婚約者が現地に1ヵ月程度滞在し続けなければなりません。この記事は日本先行の解説がメインなので、モロッコ先行の婚姻手続きについて詳しく知りたい方は日本大使館のWebサイトを参照してください。
- 結婚後は日本国内で暮らしていく
- 仕事の都合等でモロッコへの渡航が困難
日本で先に婚姻する場合は原則、最寄りの「市役所/区役所」と「モスク」、東京都内の「モロッコ大使館」の3ヵ所を往復するだけで手続きが完了します。モロッコ先行の手続きに比べると少し楽といえますね。

ちなみに、日本にあるジャーミイやマスジドも同じモスク(イスラム教の礼拝堂)を指します。
配偶者ビザを申請するなら日本で結婚
婚姻後、日本の配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)を申請・取得する予定があるなら、日本先行の結婚手続きをおすすめします。当事者の状況にもよりますが、日本で結婚後、お相手がモロッコへ帰国することなくそのまま夫婦生活を始められます💁♀️

上手くいけば、1回の訪日で配偶者ビザまで取得できるので、渡航費や時間が節約できます。
日本で先に婚姻するデメリット
- 短期滞在ビザを取得する必要がある
- スケジュールが立て込むので忙しい
モロッコ国籍者は日本へのビザなし渡航が認められていません。そのため、婚約者が現在モロッコに居住中の場合、事前に90日枠の短期滞在ビザを取得することになります。15日枠や30日枠の短期ビザだと間に合わないので注意してください。
以上をまとめると、結婚手続きも配偶者ビザの申請もまとめて1回で行いたい方は、婚約者の入国後90日以内に全工程を終わらせる必要があります。テキパキと動けば十分間に合いますが、タイムリミットがあることは念頭に置いてください💁♀️
モロッコ人との国際結婚の流れ
日本でモロッコ人と婚姻する際の手続きは以下のとおりです。
📌日本側で招へい人&身元保証人を担う
📌来日後に使用する独身証明書などを準備
📌モロッコで事前に集めた書類を持って来日
📌東京都にあるモロッコ大使館で受領
📌受理されると日本側の結婚が成立
📌日本人女性は宗教選択・改宗に注意
📌報告後に再度証明書が交付される
📌在留カードを受領すれば全工程が終了
日本で先にモロッコ人と結婚する方法(日本先行型の婚姻)はざっくりとこのような手順で進みます。それでは、次の章から順番に解説していきます🙆♀️
1.短期滞在ビザ:90日枠を取得する
招へいの目的は「日本で結婚手続きを行いたいから」をベースに組み立てましょう。日本人婚約者(あなた)が招へい人と身元保証人を担い、彼の訪日後の滞在費用は日本側で支弁する、といった内容で書類を整えるのがベターです💁♀️

結婚後に配偶者ビザへ切り替えるという文言はNGです。短期ビザは通常、モロッコへの帰国を前提に発給されるので、記載しないよう注意してください。
配偶者ビザを取得して長期滞在する意図が審査官に伝わってしまうと、目的外申請とみなされ不許可率が跳ね上がります。余計なことは書かず、あくまでも結婚手続きを目的に招へいするのがセオリーですが、詳しい説明は下の記事を参照してください。

もちろんです。臨機応変に対応しますので私たちに何でもご相談ください🙂
2.モロッコ側の必要書類を準備
日本語表記 | フランス語表記 | アラビア語表記 |
---|---|---|
独身証明書 *アポスティーユ認証必須 | Attestation de célibat *Certifié Apostille | |
出生証明書 *アポスティーユ認証必須 | Extrait D’acte de Naissance *Certifié Apostille | |
出生証明謄本 *アポスティーユ認証必須 | Copie Intégrale de L’acte de Naissance *Certifié Apostille |
上の表は駐日モロッコ大使館の公式サイト(日本語・英語)から抜粋しています。なお、これから紹介する見本画像は自由に使ってOKです。スクショなどで婚約者さんに一度見せておくと、モロッコ側の書類収集がスムーズになるかと思います。

モロッコ現地で行うアポスティーユ認証については、最後にまとめて説明します💁♀️
独身証明書:アポスティーユ付き
アポスティーユ付きの独身証明書には、モロッコ人婚約者の未婚状況やID番号、住所などが記載されています。モロッコ人側に離婚歴がある場合は未再婚証明書とも呼ばれます。独身証明書の有効期限は3ヵ月なので取得のタイミングに注意しましょう🙆♀️

独身証明書と婚姻要件具備証明書は、同じ書類ではありません。婚姻要件具備証明書を取得する際に独身証明書が必要になります。
とりあえず、独身証明書は“2部”用意しておいてください。
出生証明書:アポスティーユ付き
アポスティーユ付きの出生証明書は、モロッコ人婚約者の出生地や親の情報が記載された書類です。出生証明書も発行日から3ヵ月以内のものを取得し、かつ念のため2部用意するようお相手に伝えてあげてください🙆♀️
出生証明謄本:アポスティーユ付き
この書類は直訳すると「出生証明書の完全なコピー」ですが、前述の「出生証明書」と混同してしまうので、出生証明謄本や戸籍謄本、ファミリー証明書などと和訳されます。他の書類と同じように、発行日から3ヵ月以内のものを2部取得してください。
モロッコ側のアポスティーユとは?
日本でモロッコ人と結婚する際、モロッコ本国で取得した書類はアポスティーユ認証(Apostille)がないと原則受け付けてくれません。ざっくり説明すると、アポスティーユは「その書類を日本国内でも使用できるようにグレードアップさせる作業」を指します。
アポスティーユ後の書類の見本
モロッコ側でアポスティーユを行うと、原本書類に画像のような「アポスティーユ証明書」が綴じられます。独身証明書と出生証明書、出生証明謄本のそれぞれにアポスティーユを付けるよう婚約者さんに伝えてあげてください。手続き自体はかんたんです🙆♀️
出生証明謄本の補足
出生証明謄本(戸籍謄本・ファミリー証明書)に関しては、本来アポスティーユは必要ありません。ただし、私たちの過去の経験上、アポスティーユをおすすめしています。
婚約者本人のIDカードについて
モロッコ大使館のWebサイトでは不要と案内されていますが、万が一に備えて、モロッコ人婚約者本人のIDカード(Carte nationale d’identite)も一緒に持参するよう伝えておいてください。成人したモロッコ国民なら必ず持っているカードです。
3.取得した書類を持って日本に渡航

前章で紹介した結婚に必要な書類を持参し、短期滞在ビザを使って日本に入国してもらいます。
入国日から90日枠のカウントが始まります。この約3ヵ月の滞在期間中は、あなたとモロッコ人婚約者との婚姻成立、配偶者ビザ申請の2つを目標に行動していきます。

ちなみに、一度日本に入国すると、手続きが終わるまで婚約者はモロッコに帰国できません。
仕事の引継ぎで一旦帰国して改めて来日する、などはNGです。厳密に言うと、モロッコへの帰国は可能ですが、日本を出国した時点でビザが失効します。つまり、在モロッコ日本大使館に短期滞在ビザを申請するところからやり直しになります😓
4.大使館で婚姻要件具備証明書を申請
婚姻要件具備証明書の請求先は、東京都内にあるモロッコ大使館です。モロッコ人婚約者のほうから電話で予約してもらった上で、必要書類を持参し、2人そろって大使館窓口で婚姻要件具備証明書の発行依頼をしてください💁♀️
- 独身証明書:アポスティーユ付き
- 出生証明書:アポスティーユ付き
- 出生証明謄本:アポスティーユ付き
- モロッコ人婚約者のIDカード
- モロッコ人婚約者のパスポート
- 日本人婚約者(あなた)のパスポート

ちなみに大使館との電話やメールのやり取りは、モロッコ人婚約者にお願いしたほうがスムーズです。

手続きの費用は数千円から5,000円程度ですが、多めの現金を用意するよう推奨します。
婚姻要件具備証明書の見本
モロッコ大使館の指示に従い、無事に手続きが終わると、画像のような婚姻要件具備証明書が交付されます。婚姻要件具備証明書をかんたんに解説すると「モロッコ人婚約者がモロッコ国の法律上結婚できる身分であることを証明した書類」です🙂
※日本語訳は大使館側で用意してくれます。
来館後どれくらいで発行されるの?

基本的には即日で発行されますが、具体的な時間はモロッコ大使館の執務状況次第です。
午前中にサクッと受領できる場合もあれば、半日以上かかるケースもあります。大使館の対応は割と大雑把なので「担当者が来れなくなったから明日に変更ね😉」と言われるリスクも想定して、数日間は観光がてら関東に滞在されることをおすすめします。
5.日本の役所に婚姻届を提出
必要書類 | 説明 |
---|---|
婚姻届 | 書き方はこちらの記事を参照 |
婚姻要件具備証明書 | モロッコ大使館で発行されたもの |
重婚でないことの宣誓書 | 提出先の市役所・区役所から求められた場合 |
出生証明書 | 求められた場合は日本語訳を作成する必要有 |
外国籍者のパスポート | モロッコ人婚約者のパスポート |
運転免許証またはパスポート | 日本人婚約者の本人確認資料 |
戸籍謄本 | 本籍地以外の市役所・区役所に婚姻届を提出する場合のみ |
これらの書類を市役所・区役所の窓口(戸籍課)へ提出すれば、日本側の結婚が成立します。なお、重婚でないことの宣誓書と出生証明書の2点は、提出先の役所によって要否が異なります。電話等で事前に役所と協議し、必要書類のすり合わせを行ってください💁♀️

モロッコ人との国際結婚はマイナーな部類になるので、たいていは折り返しの連絡になるでしょう。
重婚でないことの宣誓書の見本
婚姻要件具備証明書が準備できれば「重婚でないことの宣誓書」は提出不要とする役所もあります。協議の過程で求められた場合は、提出先の役所に宣誓書の書式や見本があるかを聞いてみましょう。なければ上記の画像をもとに自作の上添付してください。

Microsoft Wordなどを用いて作成しても構いませんし、面倒であれば全部手書きでもOKです。
モロッコ側の出生証明書について
出生証明書を求められた場合は、原本書類と一緒に日本語訳を提出する必要があります。ただし、翻訳は誰が行ってもいいので、自分で訳文を作成する方も多いです。手書きで構わないので、2人で協力しDeepL翻訳やGoogle翻訳を用いて準備しましょう🙆♀️

自分で日本語訳を作成した場合は、余白に翻訳者情報(翻訳日・住所・署名捺印)を付してください。もちろん、翻訳業者に丸投げしてもOKです。
婚姻届はどこの役所に提出するべき?
最寄りの市役所・区役所・町村役場でOKです。本籍地を置いている市役所・区役所・町村役場以外で結婚手続きをする(婚姻届を提出する)場合は、日本人婚約者(あなた)の戸籍謄本が求められるので、その点だけ注意してください。
また、モロッコ人婚約者との婚姻届が無事に受理されたら、役所の担当者に「婚姻届の受理証明書」を請求してください。受理されたその日に取得できます。このあとの結婚手続きで使用するため、3部ほど用意しておきましょう💁♀️
6.モロッコ人配偶者とモスクで挙式
- 婚姻届の受理証明書(市/区役所発行)
- 入信証明書(洗礼証明書など)
- 夫婦両名のパスポート
- 夫婦両名の証明写真
日本側の結婚が成立したあとは、イスラム形式の結婚式(Nikah:ニカー)を執り行います。最寄りの礼拝堂(モスク・マスジド・ジャーミイ)から良さげな所を選び予約しましょう。事前に見学させてくれる礼拝堂も多いですね。

上記の必要書類は一例です。証明写真のサイズや立会人の要否は各礼拝堂に問い合わせてください。
日本人配偶者の宗教に注意しよう
モロッコ人と交際している方はすでにご存知かと思いますが、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教以外の宗教徒はモロッコ人男性と結婚できません。つまり、あなたが無宗教もしくは仏教徒の場合、これら3つの宗教のいずれかに入信・改宗しなければなりません。
※証明書のデザインは宗派によって異なります。
いつまでに入信・改宗すればいい?
少なくとも、イスラム式の結婚式(ニカー)を執り行う前までに入信または改宗手続きを完了させてください。教義の勉強等で入信・改宗に半年以上要する宗派もあるので、ある程度の逆算が必要になるかもしれません。
おすすめの宗教はどれ?
単なる行政書士がそのような質問に回答するのは憚られます🙅♀️ ただ統計的に、弊所の依頼者様はイスラム教かキリスト教を選択された方が圧倒的多数です。
イスラム式の結婚証明書を受領
イスラム形式の結婚式(Nikah:ニカー)が終わると、上記のような結婚証明書が夫婦に交付されます。モロッコ大使館宛に提出する書類なので、大切に保管してください。挙式後1週間程度で受領できるかと思います💁♀️
7.モロッコ大使館に結婚を報告
必要書類 | 説明 |
---|---|
戸籍謄本原本&アラビア語訳:翻訳証明書付き | 日本の外務省でアポスティーユが必要 |
イスラム式の結婚証明書:Islamic Marriage Certificate | モスク・マスジド等で交付されたもの |
夫婦両名のパスポート | 顔写真ページのコピーも提出する場合有 |
結婚報告をする前に、必ずモロッコ大使館に必要書類を確認してください。夫婦によっては、上記以外に「婚姻届の受理証明書:アポスティーユ付き」などを求められるケースがあります。そのほか、来館ではなく郵送で対応してくれる場合もありますね。

モロッコの家族法上、日本側の結婚成立後3ヵ月以内に届け出ればOKとされていますが、婚姻報告はなるべく早く完了させてください。
戸籍謄本は婚姻事実の記載に注意
役所から取得した戸籍謄本に今回の結婚が記録されているかを確認してください。婚姻届が受理されてから、戸籍に反映されるまでは1週間から2週間程度かかります。配偶者ビザの申請にも使用するので、2,3部請求をかけておくとよいでしょう🙆♀️
アラビア語への翻訳について
原則、モロッコ大使館は翻訳会社の翻訳証明書が付いたアラビア語訳を要求します。ご自身で翻訳を作成したい場合は、一度大使館に問い合わせてください。
戸籍謄本のアポスティーユについて
戸籍謄本の発行元は日本の役所なので、日本の外務省宛にアポスティーユを申請します。モロッコはハーグ条約加盟国なので「公印確認」の項目は無視でOKです。
大使館から結婚承認のレターを受領
モロッコ大使館への婚姻報告が受理されると、見本画像のような結婚承認レターが夫婦に交付されます。このレターも配偶者ビザ申請の際に入管局へ提出します。なお、将来的に他の役所で使用する可能性があるので原本還付を忘れないようにしてください💁♀️
8.入管局に配偶者ビザを申請

最後に、モロッコ人夫の配偶者ビザを入管局で申請します。必要書類の一覧は入管Webサイトを参照してください。
実務上は在留資格変更許可申請を用いますが、変更申請が難しい場合は認定証明書交付申請を選択します。いずれにせよ、このサイトでは両方の類型を解説しているので、自分で申請したい方は必要書類の解説記事などをご覧になってください🙆♀️
日本人とモロッコ人の国際結婚手続き(本稿執筆時点)を紹介しました。私たちの事務所は短期ビザを¥44,000、配偶者ビザは¥88,000から承っております🙂
Special Thanks
駐日モロッコ王国大使館