- 入国拒否の期間を経過しているかどうか
- オーバーステイの内容にもよる
- 外国人本人の反省やあなたの嘆願が必要
このページでは、配偶者ビザ・結婚ビザ申請の中でも、オーバーステイ歴があるケースについて解説しています。
この記事の目次
オーバーステイ後の結婚ビザ申請の流れ
過去に技能実習ビザやタレントビザ、留学ビザで来日し、オーバーステイで送還された外国人の結婚ビザ申請は以下のように流れていきます。
在留カードの受領で手続き完了
無事に配偶者ビザが発給されると、日本入国後に在留カードが発行されます。
入国拒否期間・上陸拒否期間とは?
オーバーステイ(不法残留)をした外国人に対するペナルティです。文字通り、日本に入国できない期間を指します。なお、厳密には「入国拒否期間」ではなく「上陸拒否期間」が正しい表現ですが、どちらも同じ意味です。
不法残留の類型 | 入国拒否の年数 |
---|---|
自分から出頭(自首)した | 原則1年間 |
入管局や警察の摘発を受けた | 原則5年間 |
以前にも不法残留歴がある | 原則10年間 |
薬物関連の犯罪等 | 原則永久拒否 |
それとなく配偶者さんに聞いてみることをおすすめします。
1年間の入国拒否について
以下のすべての条件を満たした場合、入国拒否は1年間です。1年後に結婚ビザが申請できます。
- 出国の意思をもって自ら入管局へ出頭した
- 不法残留以外の強制送還事由に該当しない
- 懲役刑または禁錮刑に処せられていない
- 過去に強制送還や出国命令を受けていない
- 速やかに日本から出国できると見込まれる
まとめると
当時が初めてのオーバーステイで、かつオーバーステイ以外の罪がなく、自分から入管局へ自首した場合が該当します。ちなみに、1年間の入国拒否のことを出国命令(出国命令制度)といいます。
オーバーステイ以外の罪とは?
偽造パスポートの使用などが挙げられます。偽造パスポートで入国していた場合、たとえ反省し自ら出頭しても、5年以上の入国拒否期間が言い渡されます。
5年間の入国拒否について
以下の条件に該当する場合、入国拒否は原則5年間です。5年後に結婚ビザが申請できます。
- 出入国在留管理局や警察の摘発を受けた
- 過去に強制送還や出国命令を受けていない
まとめると
自首・出頭せずにオーバーステイが発覚し、かつ初めてのオーバーステイであった場合が該当します。いわゆる強制送還のかたちで処分されます。ちなみに、強制送還・退去強制・国外退去処分はいずれも同じ意味です。
職務質問や勤務先の摘発がきっかけでオーバーステイが判明する場合もあります。
10年間の入国拒否について
以下のいずれかに該当する場合、入国拒否は原則10年間です。10年経過後に結婚ビザが申請できます。
- 過去に日本で出国命令を受けた
- 過去に日本で強制送還の処分を受けた
まとめると
オーバーステイを繰り返している場合が該当します。極めて悪質と判断され得るので、許可率はこれまでのケースに比べてさらに低くなります。
永久拒否について
1や2に該当する外国人は、永久拒否として扱われます。このケースでは、上陸特別許可を検討するのが一般的です。
- 1年以上の懲役刑または禁錮刑等に処せられた
- 売春や薬物関連の犯罪を犯し刑に処せられた
上陸特別許可とは?
入国を禁止されている期間中に、特別に入国を認めてもらうことを上陸特別許可といいます。かなり特殊な申請になるので、この記事では割愛します。
パスポートのスタンプからも確認可能
相手のパスポートにオーバーステイの履歴が残る場合もあります。下線の数字に注目してください。この数字は入管法の条文を表します。
- 55-3,55の3出国命令(入管法55条の3)
- 52-4,52の4強制送還(入管法52条4項)
つまり、1の数字が青いスタンプの周りにあれば1年間の入国拒否、2の数字があれば、5年または10年の入国拒否であることがわかります。オーバーステイ以外の罪でも記載され得ますが、おおよその入国拒否期間は導けます。
数字の記載がないケースもあります。
不法残留の内容・よくある事例
ひとえにオーバーステイといっても事情は様々で、審査では素行の善良性が問われます。内容が悪質とみなされるほど、審査のハードルも上がっていきます。
留学ビザからオーバーステイ
留学生として来日したが、中退してしまった。留学ビザが切れたあとも貯金や仕送りで生活し、半年ほど経ってから、自ら入管局へ出頭し帰国した。
このほかにも、大学や専門学校を卒業したが内定を得られず、留学ビザの期限経過後もしばらくアルバイトを続けてしまった、という事例も考えられます。
技能実習ビザからオーバーステイ
過去に技能実習生(研修生)として来日していたが、職場環境の劣悪さから逃げ出してしまった。
逃げ出したあとにビザの期限を迎え、別の職場で勤務していたときに摘発されるケースが散見されます。また、きちんと実習を終えたものの、もっとお金を稼ぎたいという理由でオーバーステイに至るケースも耳にします。
タレントビザからオーバーステイ
タレントビザ(興行ビザ)の期限が経過してからもお店で働き続け、摘発されてしまった。
タレントビザではなく、短期滞在ビザで来日していた場合はより悪質と判断される傾向にあります。なお、上司に指示されるがまま、接客業務に従事するケースが多く、オーバーステイに加えて不法就労に該当することも少なくありません。
「不法就労」と「資格外活動違反」は同じ意味という認識で構いません。
オーバーステイにおける嘆願書
どんな事情があれ、オーバーステイはれっきとした法律違反です。通常の結婚ビザ申請とは異なり、かなり不利な状況からの審査となるため、嘆願書の提出を推奨します。
結婚ビザ申請の嘆願書とは?
日本人配偶者、つまりあなたが作成するお願い文を指します。通常の結婚ビザ申請では添付しません。
オーバーステイ案件のほか、申請時に不利になり得る事実を前もって伝える際に作成します。事実内容や申請人(外国人配偶者)の反省を事前に伝え、審査官の心証*を損なわないようにするのが目的です。
*審査官が形成する主観的な認識や確信
嘆願書の記載項目
- 当時所持していたビザ・在留資格の名称
- いつオーバーステイになったか
- オーバーステイ中も就労していたか
- オーバーステイに至った理由・原因
- 自ら入管局へ出頭したか、捕まったのか
- いつ日本から出国したか
- 出国時に何年の入国拒否を言い渡されたか
- オーバーステイ以外の犯罪歴はあるか
- 申請人(外国人配偶者)が反省している旨
- 二度と同じ過ちを繰り返させないこと
個々人の状況にも左右されますが、上記のような項目が記載できればベターです。書き方に指定はないので、各自Microsoft WordやGoogleドキュメント等を用いて、A4サイズで作成しましょう。
追加書類の提出通知を受けることも
当時のより詳細な状況を説明する書類や、反省文などの書面を求められる可能性もあります。
オーバーステイ歴がある場合は、日本へ入国したいがための申請(偽装結婚)を強く疑われる傾向にあるため、出会った際の経緯書や写真などに代表される夫婦関係の疎明資料も追加で求められる場合があります。
おわりに
オーバーステイ歴がある場合の結婚ビザ・配偶者ビザ申請について解説しました。マイナス要素があるときは、隠さずに書面で伝えていく姿勢が結婚ビザ申請の勘所といえます。また、一般的な結婚ビザ申請に比べて審査期間が長期化しやすい点も特徴です。