- 飛行機は妊娠安定期のみの利用を推奨
- 子はどこで生まれても日本国籍を取得可能
- 診断書や母子手帳を資料として提出しよう
このページでは、妊娠している方や出産を控えたご夫婦の配偶者ビザ(在留資格:日本人の配偶者等)申請について解説しています。
この記事の目次
配偶者の居住地で手続きは変わる

外国人配偶者が現在、海外で暮らしているのか、日本国内に住んでいるのかで、取るべき申請方法が異なります。
海外に居住している場合
手続きの内容 | 手続きにかかる時間(目安) |
---|---|
資料の収集・書類作成 | ご夫婦による |
入管局へ在留資格認定申請 | 約1~3ヵ月 |
海外の大使館等で査証申請 | 約1~4週間 |
在留資格認定証明書交付申請で配偶者ビザを取得する流れになります。今から準備を始めても、来日までに4ヵ月程かかる可能性があり、入管局からの「追加資料の提出通知」などが重なると、さらに時間を要することもあります。余裕を持った訪日スケジュールを立てておきましょう。

なお、当事務所では依頼者様の事情に合わせて、妊娠中であることを考慮した「早期交付の依頼文書」を申請時に添付しています。
必ず認められるとは限りませんが、急いでいるご夫婦にとっては有効といえます。ご自身で作成される場合は、母子への影響を踏まえて、早期の日本入国が希望である旨を記載しておけばOKです(妻が外国人配偶者の場合)。
とにかく早く呼ぶには?
日本人配偶者が妻のケースで、自身の出産に立ち会ってもらいたい、出産予定日に合わせて来日してほしいなどの要望があれば、短期滞在ビザで呼び寄せるのもひとつの方法です。配偶者ビザの申請は後回しになりますが、短期滞在ビザであれば、1~2ヵ月後の来日が可能になります(ビザ免除対象者はすぐに来日可能)。

短期ビザで招待しても、そのまま配偶者ビザへ変更できない可能性があります。母国に帰国後、改めて認定申請を行う場合もあるので注意が必要です。

日本国内で暮らしている場合
外国人配偶者が既に日本で生活しているケースが該当します。留学生との結婚であっても、会社員(就労ビザ保持者)との結婚であっても、在留資格変更許可申請を検討するのが一般的です。妻が外国人の場合は、日本人夫が身元保証人を担います。

日本人妻が妊娠や出産などで職に就いておらず、また外国人配偶者による扶養も難しい場合は、日本側の親族を身元保証人に加えるのがベターです。

結婚手続きについて

妊娠中であっても、配偶者ビザ申請では両国の結婚成立が条件です。未婚状態の方は、まず婚姻手続きに着手してください。
婚姻事項が反映された戸籍謄本(全部事項証明)と、海外現地の役所や駐日公館*が発行した結婚証明書(Marriage Certificate)が揃い次第、申請の要件が整うという理解でOKです。妊娠を理由に交付されるビザはないので注意しましょう。
*日本国内にある外国の大使館・領事館のこと

妊娠中でも飛行機に乗れるの?
搭乗日 | 搭乗の条件 |
---|---|
出産予定日を含め28日以内(妊娠36週以降) | 医師による診断書が必要 |
出産予定日を含め14日以内(妊娠38週以降) | 診断書に加えて医師の同伴が必要 |
日本の航空会社では上記のような基準が設けられています*。ただ、世界的には妊娠36週を超えると搭乗自体できない航空会社が多いです。
適した時期は妊娠中期(16週から27週)
妊娠期間中の渡航に最もふさわしい時期は、安定期*に入った妊娠16週~27週とされています。海外から外国人妻を呼び寄せる場合は、この期間内に搭乗できるよう、逆算しながらの手続きが望ましいです。なお、海外には「安定期」の概念がない国もあるので、そのときは相手に具体的な期間を説明しておきましょう。
*参考厚生労働省パンフレット
配偶者ビザは何回でも申請できる

仮に在留資格認定証明書や査証の有効期限が切れても、これらは再申請が可能です。配偶者ビザよりも妊婦の体調を優先してください。
ビザが発給されたからといって、無理に搭乗する必要はありません。出産時期に間に合わない、また体調不良などが理由で飛行機の利用は避けるべきと判断すれば、そのビザは取り下げましょう。落ち着き次第、改めて申請書類を作成・提出することになりますが、たいていは初回より審査期間が短縮され、不許可になることもありません。
判断に迷う場合は、必ず医師の指示を受けてください。
出産は日本でも海外でもOK
外国人妻ないし日本人妻がどこで出産するかは、配偶者ビザの取得に関係ありません。妊婦さんにとって都合の良い場所を選んでください。出産後にビザを申請してもOKですし、妊娠中にビザを取得し、出産時に母国へ一時帰国することもできます。
子どもの国籍はどうなる?
日本は血統主義を採用しているため、父母のどちらかが日本国籍であれば、出生地に関係なく赤ちゃんも日本国籍を取得できます(国籍法2条)。なお、二重国籍は認められないので、海外で出産し、かつ子どもが出生によって「外国人配偶者の国籍」も取得した場合は、国籍留保と呼ばれる手続きが必要になります。
出産の場所 | 日本国籍の取得条件 | 手続きの期限 |
---|---|---|
日本 | 出生届の提出 | 出生日を含めて14日以内 |
海外 | 出生届(+国籍留保届)の提出 | 出生日を含めて3ヵ月以内 |
国籍留保の意味
国籍留保とは、簡単にいうと子どもが成人するまでの間、日本国籍をキープしておく手続きを指します。大人になってから、自分はどちらの国民になるかを改めて選択することになります。あなたたちご夫婦が、期限内に国籍留保をしなければ、子どもは出生時に遡って日本国籍を失うので注意が必要です(戸籍法104条,国籍法12条)。
成人までは一時的に二重国籍が認められる、という理解でOKです。
出産にかかるお金について

「短期滞在ビザ」で来日中の外国人妻は原則、診察代が全額自己負担(10割負担)になります。原則、短期滞在者は健康保険に加入できません。
市区町村が運営する国民健康保険(国保)、組合や協会が運営する健康保険(健保)ともに、短期滞在ビザで在留中の外国人に対しては、原則適用外とされています。また健康保険に未加入だと、出産育児一時金(約40万円)を受け取ることもできません。短期ビザでの通院や出産を考えているご夫婦は、相応の出費を伴います。
妊娠や出産は病気ではないので健康保険の対象外ですが、何らかの医療措置が必要な場合(つわり,貧血,妊娠高血圧症候群など)は適用され得ます。
速やかに配偶者ビザへ切り替えよう
妻に配偶者ビザが交付され、あなたが扶養等の手続きを行えば、上記の問題は解消されます。来日後は、なるべく早めに短期滞在ビザから切り替えるよう推奨します。ちなみに、変更申請(在留資格変更許可申請)の審査期間は2週間から1ヵ月が目安です。

外国人妻が留学ビザや就労ビザを所持し、各種健康保険に加入していれば、病院は3割負担で済みますし、出産育児一時金も原則支給されます。
妊娠証明書や診断書の取り扱い
配偶者ビザ申請の必須書類ではありませんが、妊娠証明書(診断書)は可能な限り添付しましょう。妊娠の証拠があれば、婚姻や交際の信憑性が認められるほか、子どもの権利にも関わってくるため、審査で有利になるとされています。
母子手帳も資料になる

外国人妻または日本人妻が既に母子健康手帳を持っている場合は、診断書の代替資料として使用できます。表紙と健診経過欄のコピーを取ってください。
そのほか、海外側の病院・医療機関で発行された各種診断書も、配偶者ビザ申請で提出できます。ただし、外国語の文書を添付する際は日本語訳文も求められるので注意しましょう。個人やご夫婦が翻訳してもOKです。
短期滞在ビザでも母子手帳はもらえる?
住民登録のない短期滞在者であっても、母子健康手帳は原則交付されます*。在留資格「短期滞在」を保有している外国人は、生活の基盤が海外にあるとされるものの、母子手帳は人道的な観点から交付されるのが通例です。滞在中に妊娠が判明したら、お近くの保健センターもしくは市役所・区役所の窓口へ妊娠届を提出してください。

母子手帳の交付時に、保健師さんとの面談がある自治体も多いです。なるべく通訳者として日本人配偶者が同伴するようにしましょう。
*参考母子保健法16条,内閣総理大臣答弁書(内閣参質147第26号)
妊娠や出産に伴う配偶者ビザ申請について解説しました。日本人配偶者が女性のケースでは、就業状況の兼ね合いから、収入面が問題になることも少なくありません。夫婦が無職で、かつ親族の協力が得られない場合は、審査のハードルが上がる点に留意してください。